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迎えに来ない?
「ったく」
硬派に生きて来たアスカのこれまでの人生に恋愛の二文字はない。聞き知った話も聖霊達のろくでもない噂ばかりで、多少まともと言えるのが父親から聞かされた母親との馴れ初めというお粗末さでもある。一目惚れした母親を前に醜態を晒し、それが切っ掛けで付き合えたというものだ。息子にとってはアホらしいだけの話だが、恋愛における珍妙でひたむきな心中は理解出来たと思っている。そうした耳学問を基礎にして、アスカは変異を可能にした男と女の愛の始まりに疑問を持ち、少年と少女の諍いの先を予想した。
少年は夫の権利を言い訳に少女の寝所に押し入った。歓迎されると思っていたのなら、ただの間抜けだ。それでも少年の立場からすれば仕方ないとしても、父親のように椿事に救われ、弾みでうまく行くことがある。
〝これでもう……〟
静寂を破る少女の寂しげな声音がアスカにはまさに椿事に思え、その続きに聞き入った。
〝あのものは迎えに来ない〟
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