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顔を赤くした?

「くぅっ」  ここで悔しがっては、男の思う壺だ。悠然とする男を負かすには、のほほんとし続けなくてはならないが、理解はしても、アスカには胸のむかつきを抑えるのが難しかった。まさかこの時において、男がアスカ自身に目を向け、それを言葉にして楽しむとは思わなかった。女を求めて来ないのは幸いなことだが、この状況ではむかつきこそすれ、有りのままに見てくれた喜びに浸れるはずはない。 「うるせっ」  結局、アスカは怒鳴っていた。小細工しても勝てない相手と、にこやかさを振り捨て、むすっとしてやる。しかし、それさえも男に楽しまれてしまった。甘さと渋さが絶妙な美声にも笑いが浮かぶ。 「心配は無用、依頼はある、フジに追加申請するよう指示したのはその為ぞ、人狼もかかわる故に忠告を……」  そこで男はふっと笑って目を細め、ほんの微かに頬を染めた。白蝋気味な肌のせいで気付ける程度の色合いだが、確かに顔を赤くしたとアスカには思えていた。
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