「お……おっ？」 　意外性は不安を誘うが、魅力にも映る。無表情一筋のヴァンパイアが感情豊かなのはおかしなものだが、世慣れたオヤジであるはずの男が見せた照れには、可憐にして貴重な緩みがあり、気持ちも高まる。 「けど……」 　魅了されたからといって襲い掛かる訳には行かない。頬を染めた男の思いを見極めるまでは控え目にし、妄想を膨らませるだけにとどめておく。その妄想があからさま過ぎたのだろう。アスカがにやついてみせたことで、男を腐らせたのは間違いない。 「故に、君に忠告をした」 　そう言い直した男の口調はひややかで、ヴァンパイアそのものに響く。さらには完璧な無表情となって話を継ぐ。 「アルファに対し、君が君でいるには、忘れるな、私を盾とするが最良というのをな」 　そして精霊達に愛される崇高とした美貌を見せ付ける。もちろんアソコも喜ぶ美しさだが、頬を染めた男に妄想したアスカに逆らい、裏切り者らしくぴくりともしないでいた。