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思い浮かんだ答え?
「よかろう」
男はすっと淀みなく答えていた。アスカに七割持って行かれようが、ウルトラハイパースポーツカーを叩き壊せる男には、はした金でしかないのだろう。無表情でわかりづらいが、声音には揺るぎない響きが伴わされている。
「私に異論はない」
アスカにとっては〝よし〟とばかりに拳を突き上げたいところだが、余りに順調過ぎて、逆に喜べないでいた。にやつかせていた顔を、徐々に考え込むような渋面へと変えて、男を見遣る。
男は事業内容の追加申請までして、アスカに表立って仕事をさせようとした。遊び半分ですることではなく、殿様気質のヴァンパイアであるのを考え合わせれば、尚更だ。それをフジは〝張り合いたい〟と表現したが、アルファへの嫌がらせに思えた真意も、そうなると『人間外種対策警備』への強い不信感と言えなくもない気がして来る。
「依頼って……」
アスカは思い浮かんだ答えを迷いながらも言葉にして言った。
「ヌシの、アレか?」
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