602 / 813

迷いは禁物?

 アスカの頭にはヴァンパイアコスと呼ばれる者達の仮装パーティーがあった。変態屋敷に赴く原因となった騒ぎだ。その動画に映っていた白塗りの少女が行方不明というのだが―――。 「ああ……」  男の返事は曖昧として、認めはしても嫌々といった調子に響く。長年の習慣がさせるのか、ヌシと聞くだけで身構えてしまうのかもしれない。ヌシがいる訳でもないのに、男は完璧な無表情をより完璧にして、明言を避けていた。  魂を人質に取られた形で感情を弄ばれ続けているのだから、アスカにしても同情しなくはない。無表情になって精神の均衡を図りたがるのも理解する。しかし、これでは男をだらだらと居座らせるだけで、聞きたい話が一向に聞けない。それで男が喋りやすくなるよう、アスカの方から仕掛けることにした。 「けど、依頼主はヌシじゃねぇ、奴はただのクソガキだ、だろ?」  仕掛けようというのなら、迷いは禁物だ。アスカは男を見詰め、自信満々に話を振った。

ともだちにシェアしよう!