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声音を似せて?
「あはははっ」
アスカも男に合わせて笑い返した。魂の解放はまだまだ先の話になりそうだが、アルバイト風山男にかまけて多少遅れたとしても、女に文句はないだろう。男にしても同じだ。アスカの前では好きに振る舞っているのだから、女と裏でこそこそしようが怒れはしない。言うなれば譲り合いの精神だ。複雑に絡む三者に差す光とも言える。その光明に勇気付けられ、続きを話すアスカの口調もさらに弾んだ。
「ヴァンパイアコスの行方不明なんて、あんたらには知ったこっちゃない、けど、アルファのことがある、で、クソガキはあんたを使って俺を呼んだ、パシリにして内々で済ませようって腹だったのさ、なのにあんたは正式に俺の仕事するっう方法に出た、俺の為なんて言わせねぇぜ、あんたの気紛れでもねぇ、ちょいと騒がしいこの居住区のせい、だろ?」
アスカが思っていたのは、聖霊達が変態屋敷の応接室で声音を似せてヌシに聞かせていた男二人の会話だった。
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