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内々にこっそり?
確かに、アスカも味方を誰にするのかは重要なことだと思っている。間違った相手を選べば、勝てたはずの勝負にも負けるからだ。そうした場合に限って熟慮する暇もない。瞬時に的確な選択をしなくてはならないのだが、悠久の時を生き抜くヌシは、この限りではないようだった。思考すらしないままに答えを出していた。
〝去ね〟
その一言で男二人を平然と幻惑し、応接室から追い払った。ヌシの頭にはアルファのことしかない。男二人の話に耳を貸したのもそれに尽きる。人間から落ちこぼれ扱いされる無能な能力者をパシらせ、こっそり片を付けようとしたのを見てもわかることだ。
モンスター達は時代の変化によって世に認められはしたが、居住区という檻に押し込められもした。そこからの完全解放をやっと取り付けたこの時に、ヴァンパイアコスの行方不明で無には出来ない。内々にこっそりというのも、卑怯なだけに思えるが、ヌシなりに気遣ってのことだったのだろう。
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