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とうにわかって?

「てか……」  気遣いというのなら、目の前で微笑む美貌の男も同じと、アスカは思う。ヌシはアスカをパシリにし、秘密裏に処理したがったが、男はアスカの事業内容に手を加え、正式な仕事として働かせたがった。その違いは大きいように映っても、モンスター居住区の完全開放を成し遂げようといった立場から見れば、大して差はない。目的達成の為の配慮に違いがあるだけだ。しかし、それによって得た結果に大きな差があることは、アスカにも理解出来る。 「だな」  アスカは鑑賞に値する笑顔も華やかな男を見詰め、自分自身に向かって頷いた。男は戦略のもとに正々堂々と攻め入る気でいる。そうした自らに恥じない戦い方をアスカも好む。まさに誰を味方にするのかの選択であり、アスカ自身、既に盾になるとまで言った男を選んでいた。 「まっ、クソガキなんてうぜぇし、いいんじゃね?」  男は微笑むばかりだった。アスカにはそれで良かった。答えはとうにわかっている。

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