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門外漢と知りながら?

「正式っうか、依頼ってぇの?相当ごたついてんだろうけど、金にはなる、よな?」  パシリは単なる使いだ。話を伝えて終わりだが、仕事となるとそうは行かない。報酬を頂くからには相手を納得させる報告を必要とする。その為にも詳細を知らなくてはならないが、微笑むばかりの男がすんなり語るはずもない。男をいち早く退去させるにも、聞き知った手掛かりを頼みに、このまま一人喋りを続ける方が効率良く進む。 「で、俺と組んで『人間外種対策警備』と渡り合おうってこったが……」  アスカは上機嫌で続けていたが、依頼内容に思いを向けた時、はっとして、と同時に、そこに得心も行った。ヴァンパイアコスの行方不明は些細なことだ。男からも聞かされていた。苦もなく探し出せるが、敢えてしないのは関心のなさによるのだと―――。ところが男はアスカの事業内容にまで手出しして、かかわろうとする。アスカが〝霊的被害の相談及び調査〟の門外漢と知りながらだ。

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