「んで、つてっての？そんなんでさ」 　アスカは内心苛立っていた。男が現れた時点でわかっていたことだが、アスカの求めた穏やかな暮らしがどんどんと、さらに遠のいて行く。毎度毎度、男の色香に惑わされ、こうして何やかやと相手をする自分のお人好しさにむかついてならない。新たに人生を楽しむつもりでいるのだから、ジジ臭い穏やかさを先送りさせるのは構わないのだが、男に振り回されているようにも思えて、不満が募る。それでもアルバイト風山男とのルンルンな日々に思いを巡らせ、気持ちを抑えた。 「あの子の？親っうか？」 　ルンルンな日々はアスカを支えた。全身これ誘惑のような男を前にしようが、ふざけ調子の明るさを衰えさせない。 「依頼もよ、そこじゃね？こっちに回したって感じでさ」 　立て続けに問い掛けたのが奏功したのか、男が笑顔を崩さないままに反応した。要は口を開いたのだ。 「自ら戻って来た」 　そしてこう続けた。 「奇態なる様子にて……」