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そそのかされて?

「てか……」  アスカは心のうちで思っていた。少女の父親がモンスター居住区の完全解放反対派を支援したのは、ヴァンパイアコスに夢中の娘を気に病んでのことだ。でなければ娘の様子がおかしいからといって、個人的な親しさでもって、ヴァンパイアとの繋がりも深い事務所の所長を頼りはしない。だからこそアスカには過ぎた親心で都合のいいことしかしていないように思えた。 「まっ、アホってこった」  それでもアスカは気にしない。客には優しくを標榜する以上、報酬分の仕事はきっちりとこなす。男も同じ考えであるのは、続けて語った依頼主の評価で理解した。 「無知蒙昧が故のことよ」  それで男はフジに指示を出し、翌日、アルファのもとへと出向いたのだが、アスカの存在は想定していなかったという。 「っうと……」  アスカは男がアルファと作った暑苦しい二人の世界を思い出し、半ば呆れて聞いていた。 「アレってさ、精霊のクソにそそのかされて?じゃねぇの?」

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