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待たせたな?

「っうこった」  幾ら腹を立てようが、アスカ自身が気に入っているのではどうしようもない。 「憎らしいけど……」  アスカはふんと鼻を鳴らしたあとで、観念したように言葉を繋げた。 「憎めねぇし」  可愛いとさえ思える時がある。そこに溜め息を吐きつつ、汚れた食器を食洗機に入れて、バスルームへと向かった。シャワーを浴びるあいだも、キャッキャと騒ぐ聖霊達の声を耳にするが、無視してやった。男を主役に妄想する彼らに、明確な意思を示したのだ。実を結ぶ日が来るのかはわからないが、何もしないよりはいい。それを水の聖霊に笑われた。 〝我ら天地にありて、不変〟  その柔らかな響きにも無視を決め込み、顔を洗った。洗い立ての下着の上にスウェットを着直し、一目散に部屋へと急ぐ。そして仕事着を手に取り、素早く着替えて部屋を出た。 「待たせたな」  アスカは大型モニターの前に立ち、胸を張って居丈高にそう言った。男が驚きに目を見張ったのは心外だった。

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