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平気なふりで?

 男に子供扱いされるのは、今に始まったことではない。人として生きた男の四十年余りの年月と比べても、たった十八年のアスカでは、経験値からして完敗だ。ヴァンパイアに変異したのちの数百年を加えたのなら、アスカが腹を立てること自体がおこがましいとなる。それでもむすっとなるのは止められない。しかもその状態のままに瞬間移動をされたのだ。惚れていようがいまいが、身の程をわきまえようという馬鹿げた気分になれるはずもない。 「ぐぇっ」  毎度毎度のえずきに、ここでも悩まされた。それに対して、男は涼しげな顔でアスカを抱きかかえている。こうした無慈悲な男と渡り合うには体力が必要だ。男の場合、そこかしこに溢れ出る自然界の精気を取り込み、常に万全の体勢にある。となれば腹に入れたピザトーストを吐き出す訳には行かないことにもなる。 「うぐっ」  アスカはむかつきをどうにかこうにか飲み下した。そして瞬間移動も平気なふりで男を見遣った。

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