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じゃわげもにょが?

「おおっ?」  アスカは驚きではなく、ましてや勝利の喜びにも程遠い奇妙な声を出していた。子供扱いそのままに懐深くへと片腕で尻を押さえ込まれはしたが、かかえ直された今の位置が結構イケたのだ。腕の中にすっぽりとは行かないまでも、そこそこの抱擁にはぬくもりがあり、寛ぎの空間と言える程の心地良さを有している。鼻の先端が男の首の付け根辺りに来たのもあって、麗しい顔が目睫に迫り、その興奮にヴァンパイア特有のひんやり感にも熱を思う。これでは戸惑い、驚きと喜び、どっち付かずの奇妙な声も出るというものだ。 「うーん」  鼻腔をくすぐる爽やかな匂いも嗅ぎ放題で、アスカが鼻をひくつかせると、それに応えて男が笑いに胸をしっとりと震わせた。 「上等じゃねぇの」  アスカはわざとらしく呟いた。男に聞かせようとしたからだが、まさかそこにヤヘヱが割り込んで来るとは思わなかった。 〝じゃわげもにょが〟  聞こえないふりをしたところで無駄だった。

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