「おいおい」 　それでもアスカは流されまいとした。ヤヘヱと男の様子には、怯えと無表情といった違いはあっても、そこには共通する何かがある。哀れな調子に呼び掛けたのも、それを知ろうとしてのことだったが、男が再び別荘へと向けて視線を下げたのを見て、怪訝な怯えに促され、自然とアスカも男の視線を追うことになる。 〝あ……ふぇにゃりゅぎゃ……〟 　男の動きが影響したのか、初めから言い直すヤヘヱの口調にも怯えが増す。 〝ぐ……ぐちぇ者、ちょ……ちょりぇゆ……故、我りゃぎゃと……殿ば〟 　アスカを抱いて闇の領域に紛れたと、明らかな恐怖に震えつつ、たどたどしく話を継いでいた。ヤヘヱの言う〝ぐちぇ者〟は、一時的にも忌避すべき者と言えそうだ。依頼主なのだから、そうそう長く避けてはいられないが、男にこう言われていたのを思い出し、納得もした。 〝それは……〟 　アソコもお気に入りの美声がアスカの頭に再生される。 〝君の判断にゆだねようぞ〟