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輝いてさえ?

 少女の変貌は、変態屋敷で見せられたヴァンパイアコスのパーティー動画を思うのなら知れることだ。動画の少女には、箸が転んでもおかしい年頃に見合った笑いにキャハハと弾ける無邪気さがあったが、眼下に望める少女には、そういった悪ふざけを楽しむ感受性豊かな可愛らしさはどこにもなかった。凛とした立ち姿に迷いはなく、たおやかでありながらも精悍さを思わせ、白ニットワンピースに薄茶のショートブーツを合わせた大人びた装いもしっとりとして、聡明で清楚な令嬢を印象付けている。 「なんてこった……」  少女は紛れもなくしっかりと憑依されていた。それなのに死者が放つ悪臭にまみれてはいなかった。アスカを頼るしかないとなれば、相当な臭気を放つ黒影に覆われていてもおかしくないのだが、白ニットワンピースの効果なのか、黒影どころか秋の日差しを受けて輝いてさえいる。判然としないアスカの思いも、そこに見た違和感からのものと言えるのだった。

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