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おしまいだよ?
「いや、てか……」
目にした少女と動画との違いを理解したとしても、憑依を思わないのなら、年齢の割に落ち着いているだけのことで、これを普通と見ていただろう。そこにアスカは恐ろしさを感じ、思わずこう続けていた。
「スゲぇな」
素直な呟きが遥か下へと届くはずもないのだが、少女がすっと顔を上げてこちらに視線を向けた時には、実際に体を震わせていた。片腕にとはいえ、男に抱きかかえられているのでは、気付かれない訳がない。その刹那、不意に男が喋り出したことでも、からかい半分の世話焼きとわかる。
「闇の領域なるは禁足の地」
しかも慰めるような穏やかさで話を継ぐ。
「何者も踏み入るを許されぬ、だが、時に闇は生者を弄ぶが如くに誘い込む、故に、生者には救いがあり、死者には無情、救いはなし」
それもフジが簡明にまとめていたと、アスカは男の話に思っていた。
〝迷い込んだら……〟
フジの恐怖心が今更ながら切実に迫る。
〝……おしまいだよ〟
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