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行かせる為のもの?
「おいっ」
アスカはそれへと向き直り、邪魔臭そうに呼び掛けた。それが言った〝あの日〟を思い、その正体にも気付けたが、だからといって何かが変わる訳ではない。男を相手に疑似戦場の肉欲の場を夢想し、にやついていた時にも、それは男だけを見詰めて、アスカには目もくれないでいた。何とも鬱陶しい奴らであり、こういった輩は追い払うに限る。アスカの判断にゆだねると言った男が気にするとも思えない。その考えで構わず続けて行くことにした。
「あんたら……」
それなのに言葉に詰まったのは、ふと考え直したからでもあった。男の変異に合わせて眠りについたのが幸いし、それの魂も今のところは清らかだ。霊媒に強制的に送られるという惨めさを経験しないままに、すんなりと昇って行けるだろう。男と接触してはその機会が失われてしまう。闇の領域も完璧な無表情も、行くべきところへそれを行かせる為のものと、そういった男の真意がアスカにも見えて来る。
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