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感情を伴わない?
天下を狙えた戦乱の世のことだ。強靭な家臣団を率いて名を馳せれば標的となる。いつ如何なる時にも隙を見せてはならないのだが、〝あの日〟の外出は領内のことでもあり、僅かな護衛で十分に思えたと、男は続けた。領民を前にしての私的な外出に兵を連れての移動は仰々しい。
「だが……」
そうした気の緩みが命取りとなった。
「おのが許せぬのよ」
自責に満ちた男の声音がアスカの中で、魂の記憶から呼び起こされた男の言葉と重なり合う。
〝謀叛如きでそなたを死なせはせぬ〟
そして数百年後のこの時に、男は淡々と〝あの日〟への思いをアスカに聞かせた。家臣が謀叛に走るよう仕掛けたのがヌシであっても、そこに恨みはない。〝あの日〟の外出を漏らされたことに慚愧するのみと―――。
「裏切りか?」
アスカの驚きは男の嘆きだ。男は首を横に振って否定し、この身に利己的な夢をいだいたすえのことだと、滑らかでありながらも感情を伴わない口調でアスカに返した。
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