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ずっとそこに?

「てかさ」  黒光りする高級車が帰ってしまったからには、男が約束した報酬もぬか喜びに終わってしまった。その理由を理解はしても、面白がれる話ではない。男は聖霊の情けを乞うつもりでアスカを利用し、かつて小姓として側に置いた五人の魂が自らの意思で行くべきところへ行けるよう計らった。そこに加勢し、怒鳴り付けたのが悪かった。それによって七割頂けたはずの報酬が泡と消えたのは、アスカにすれば無念と思うより他ないことではある。 「俺の取り分、どうしてくれんの?」  せめてもの慰めに男の甘い声音で謝罪されたいところだが、男は微笑むばかりで何も言わない。とはいえ目の保養にはなる。突として酔いどれヤヘヱの陽気な笑いが耳に響かなければ、アスカもにやついていただろう。 〝ふほっふほっふほっ〟  ヤヘヱはいつの間にかポケットチーフを抜け出て、アスカの鼻先近くの上衿へと宿り移り、ずっとそこにいたというように、やたら明るく煌めいていた。

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