675 / 814
僕に任せれば?
「だけど……」
言いながらフジが男の腕を掴んだままに視線を上げていた。男に冷たく睨み返されるのを想定してのことなのか、元気で明るい口調にも勢いが増す。それを男は威厳でもって押さえ込もうとしたようだが、アスカには無駄な足掻きにしか映らなかった。フジの勢いに苛立ちながらも、やはりそこはにやりとしてしまう。
「仕事はちゃんとやってくれないと」
フジが口調に横柄さを出したのも、アスカの男臭いにやつきを励ましと捉えたからかもしれない。子供じみてはいたが、意気盛んに続ける直前、フジなりの男臭さでアスカに笑い返していたのだ。
「ここに来る途中、所長が運転する車に気付いたけど、方向が逆だった、依頼人との顔合わせに失敗したみたいだね、僕を通さずに始めたりするからだよ、そんな不手際、呼び掛けに反応がなくったってこうして代表を見付けちゃうように、僕に任せれば……」
そして最後は強気に威勢良く言い切った。
「なかったのにさ」
ともだちにシェアしよう!