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女の勘は?

 男の亜種として変異したとしても、フジがヴァンパイアであることに変わりはない。相手がアスカというのなら、男の場合と同様に、問答無用で思うがままだ。これが肉体的に同じ人間というのなら、アスカの方が幾らも優位に立てる。言うなれば今のフジがそうした状態にあった。直立不動の男を見てもわかるように、フジの力で男を御するのは不可能に近い。アスカに呼ばれて振り向いたフジに、助けを求めるような情けなさを感じたのも、フジ自身の生来の非力さによるものと、アスカには思えていた。 「てか……」  力を貸すにしても、この段階でフジに去られては困る。男に用はない。さっさと連れて行けといった気分でいるが、それではフジを呼び止めた意味まで消えてしまう。 「来週にさ、母親が来んだけど……」  その連絡を受けたのは先週のことだ。花の咲き具合を心配してのことだったが、女の勘は侮れない。直感に従って念押しして来たような気がしないでもなかった。

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