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自分に許した?

 勝手気ままな風がしたことだ。地の聖霊も文句は言えない。互いの領分を侵さないという暗黙の了解で存在するのだから、仕方ないことではある。それでもアスカが言う分には差し支えなかった。地の精霊も微かな地鳴りでもってアスカを後押しする。その期待に応えようと、アスカは撫でるように軽く片足で地面をこすり、顎先で男を指し示しながら続きを口にした。 「っても、そいつに原因がないとは言えねぇ、あんたは代理人だし、そこそこ見られるように出来ねぇかっう相談をさ、したいのよ」  そしてフジの機嫌を窺いつつ、断らせないよう語調を強めて言った。 「で……っ」  しかし、フジがぱっと顔を輝かせたことで、ムチ姫のしもべだったのを思い出し、言葉が淀む。だからといって逃げる訳にも行かず、叫ぶようにこう続けていた。 「で!どうよ!」 「ナギラさんに頼めば大丈夫かと」  フジの喜びに震える声音に恐れをなして、アスカは少しだけ後ずさるのを自分に許した。

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