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攻です、す?

「虫が好かない相手って、いるものだからね」  そこはしみじみした雰囲気にして、それでも溌剌さを失わないフジは有能と評されている。故に万能でもあるはずと、アスカは思った。見方を変えれば、巧みに抜け目なく立ち回る悪賢さを持ち合わせていることにもなると、今になって理解する。男の麗しい顔が語る腹立ちも、フジを良く知るからのようだ。得意の無表情とは対極をなす厳しさで、睨み付けて来る。その男の視線を避けて、アスカは思わず眩しさに目を細めたくなるフジの笑顔を瞳に映し、心持ち自慢するように響く元気な声音に耳を傾けた。 「だけど、やらねぇの一点張りなんて、ひどくない?それで僕、代表に話してもらったんだ、兄貴さんも代表には弱くてね、僕を弟分にしたのだって代表の亜種だからだし、速……」 「よっし」 「……攻です、す?」  皆まで言うなといった調子に、アスカはフジの邪魔をしてやった。面食らったフジの間の抜けた顔に気分も上がる。

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