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偏屈な兄貴に?
「ふふん」
アスカが上機嫌で鼻を鳴らしたのも、そのままフジを抑え込もうとしてのことだ。間抜け面を晒そうが、すぐに立ち直って眩しい笑顔を見せるフジには、喋り好きなヤヘヱと同じ匂いを感じさせる。精霊魂に熱く燃えたヤヘヱの興奮さながらに、ナギラの大伯父から始まる親類縁者の繋がりを、またも聞かされることになってはたまらない。男の言葉には偏屈な兄貴も即時に従うのだと、それがわかればアスカには十分だった。変態屋敷のガラス花器一杯に生けられた深紅のバラや、モンスターカフェの密林じみた種々雑多な観葉植物を思うと、不安がないとは言えないが、顧客の好みに合わせただけのことにも思える。母親の予定を一番にするのなら、気にしている暇もない。
「っうことで……」
アスカは男へと向き直り、ひねくれた笑いと共に独断的に続けた。
「あんたさ、こいつと行けっての、仕事ついでに、偏屈な兄貴によ、俺んとこの花の手配、頼んでもらいてぇし」
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