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こうした言葉が?

「最高だぜ」  アスカはにやつきを大きくし、誰もいない空間に言葉を発した。男を追い払えた上に、茎と葉っぱだけになった花達の蘇生にも目処が付いたのだ。母親にひたすら謝る必要もなくなった。これを喜ばずしてどうする。 「ふふふん」  それで本来の予定をこなそうと、鼻歌まじりに籐編みの手さげかごを取りに家へと入った。そうしながら〝すぐに戻る〟と言った男を思い、官能的でありながらも命じるような厳しさに、ぎくっとなる。 「マジ、ヤベぇぞ」  アスカは男が戻る前にと急いで外に出た。精霊達にチクられる危険もあったが、あたふたする男を眺めて楽しむ方が確率的には高い。そこは確かと思いつつ、そそくさと前庭の石畳を走り抜け、魔女たらしめるフードで顔を隠し、心穏やかに中心街へと歩き出した。しかし、何気なしに腕時計を見遣った時、思いもしなかったことに唖然とする。 「く……っ」  そうなるとやはりこうした言葉が口に出る。 「……そったれがっ」

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