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こちらに付いて?

 腕時計は両親から贈られた高校卒業の祝いの品だが、雄々しさの中にも繊細さを感じさせる意匠が好きで、以前からずっと欲しがっていた物でもあった。母親似の弱っちい顔に勇猛さを映し、がさつな喋りにも多少の優雅さを描くはずと、そうした信念のもとに身に着けている。それもアスカの思い入れでしかないのだが、魔女のイメージには相応していたようで、男物にもかかわらず、客の誰一人として気に留めないでいた。その豪気で繊麗な文字盤に、忌々しくも小憎らしい煌めきが鎮座していた。そこに見たものがヤヘヱであることは、今更のことではある。 〝ふおふおふお〟  ヤヘヱがジジ臭く笑って見せたのも、アスカに対する立場を明確にしたいが為だろう。男に付いて行ったところで、仕事ばかりで詰まらない。新しい玩具―――アスカという配下を手に入れた今、上役気分で踏ん反り返っていた方が気も楽だ。アスカには腹立たしくあっても、こちらに付いて当然と言えた。

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