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五感を頼りに?

 物に宿る精霊達はそれを使う人間の行動を記憶する。大体が下ネタ上等の修羅場最高といった恋愛話だが、長年続けたことで大の噂好きになったのだから、笑える話でもある。アスカからすると、近付くたびに一斉に喋り出されるのだから、迷惑な話でしかない。それでも耳学問による知識は豊富に得られた。アスカをうぶな未経験者にはしたが、性癖にも性格が出ることだけは理解した。 「けど……」  その青年には機能しないでいた。予備知識があって損のない状況の今こそ、精霊達のかしましさが必要というのに、彼らは何も話そうとしないでいる。 「クソがっ」  精霊達は気紛れだ。話したくない時もある。滅多にないが、全くない訳でもない。そこに意味を持たせて黙っているのかもしれないが、そうした思考自体が彼らとは無縁なものだ。そもそも似合わない。つまり今のアスカには人間としての感覚以外に何もないことになる。自身の五感を頼りに探るより他に方法がないのだ。

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