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優雅に眺めて?
「てか……」
ここ何年も『人間外種登録変更制度』を利用しようという能力者は現れないでいた。モンスター居住区に移住を決めた時に、国勢調査での人口推移を調べたことでわかっている。能力者の移住や死亡によってのみ増減し、その数字は何年ものあいだ動いていなかった。それをアスカが書き換えるとしても、続く者がいないのも確かではあった。
精霊にすれば『霊媒』と判定された能力者でも、アスカ以外は普通の人間と何も変わらないことになる。そうした思いは物に宿る精霊達に顕著で、能力者達の言動を鋭敏に感じ取って記憶している。しかし、そこにはモンスターとの約束がある。モンスターに尽くすのを生きがいにして仕える人間達と同じに、能力者達の噂も極力控えていた。口の軽さは災いを招く。モンスターと人間の熾烈な戦いはこりごりなのだ。何をされるにしても、後が怖いと恐れおののきもする。自然界の聖霊はそれさえ優雅に眺めているようだが―――。
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