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鬼面を載せて?
「まぁな」
むくれてみせても仕方がない。肉体的にはアスカは普通の人間だ。その人生は短い。星の創世と共に存在する精霊の理に不満を持つだけ時間を無駄にする。そうフードの奥で思いつつ、アスカは『人間外種対策警備』を目指して足早に歩いた。傍目にはこちらに顔を向ける青年へと急ぐように見えただろうが、まばらな人影では気にする意味もない。それも突如現れた鋼鉄の壁に鼻から見事にぶつからなければの話だが、人生にはこういった望みもしない出来事がまま起こるものではある。
「な……なっ?」
ぶつかった反動でそり返り、フードが外れてふわりと背中に垂れ落ちる。体ごと持って行かれずに済んだのは、壁から伸びて来た棒状の何かに支えられ、踏みとどまれたことによる。
「クソっ」
アスカは鼻先をさすりながら、行く手に立ちはだかった壁を見遣った。壁は洒落たスリーピーススーツで身を飾り、上部にアソコが縮み上がるくらいの怒りの鬼面を載せていた。
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