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フードを元に?

 髭ボーボーの山男を理想とするアスカにとって、母親似の可愛らしい顔立ちは悩みの種だ。聖霊達のろくでもない噂と相まって、アスカを硬派たらしめ、挙げ句、恋愛知らずの未経験者にした。ムチ姫の〝しもべ〟が特異な訳ではない。目立たないようにしていた子供の頃からずっと、誰彼なしにされて来たことなのだ。青年の気品溢れる切れ長の目に映された驚きにも、同じ匂いを感じてならない。ただ少し、アスカには何かが違って思えた。聖霊達の声が聞こえて来ないこともだが、ヴァンパイアがすぐ目の前にいることに無頓着なのが気に掛かる。 「大丈夫?」  そう続けた青年の声音は優しげだった。男に勝る甘さもあったが、アソコは弛緩したまま動かないでいる。成熟した男が放つ物柔らかな渋さがないと不満なだけの気もするが、それでもアスカは警戒した。身を隠すように背中に垂れ落ちたフードを元に戻し、そして当然、その奥から元凶である男を睨み付けてやったのだ。

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