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青年を見遣って?

 男が壁となってアスカの前に立ちはだからなければ、青年が近付いて来ることはなかった。今も『人間外種対策警備』の入り口に立っていただろう。アスカも警戒することなく、同類としてのよしみで挨拶をし、にこやかに遣り過ごせていたはずだ。それを男が無分別に現れ、ふいにした。しかもアスカが幾ら睨んでも、気遣い一つ見せようとはしないでいる。 「ったく」  殿様気質のクソ野郎と思えばそれまでだが、この時、男の関心はアスカにはなかった。青年にあるという現実が尚もって腹立たしい。そのむかつきが衝動となって、つまり嫉妬に駆られて、アスカは刺々しげにこう続けてしまっていた。 「それ、何のつもり?」  男は青年の声がしたと同時に、壁からヴァンパイアへと立ち戻り、載せてあった怒りの鬼面を取り外し、麗しくも完璧な無表情にすげ替えていた。そしてそのまま少し体を後ろに向けて、銀白色を帯びた錫色の瞳を横へと流しつつ、青年を見遣っていたのだ。

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