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瞳以上の興味を?

「お……っ?」  アスカには驚きだった。好奇心と言い換えてもいいくらいだ。リンは人間の基準からすれば優しげな声音の青年と大差ない年齢だが、人狼の基準ではまだまだ子供と言えていた。その甘えん坊らしい利かん気が抑えられていたのだ。きりりとした美丈夫な顔を柔和に崩し、爽やかに微笑んでいる。  初対面で敵愾心を燃やされたアスカからすると、気分がいいとは言い難い。それもフジが人気ゲームの主人公から派生したムチ姫の〝しもべ〟というのが原因では、仕方ないことではある。フジを慕うリンの熱意が秘密組織で繋がり合う〝しもべ〟の執着心に勝てる訳がない。アスカにとっては逃げるか諦めるしかないことなのに、リンは嫉妬の余りに襲い掛かって来た。そこに苛立ちはしたが、理解しないつもりはない。嫉妬は致し方ない感情だ。アスカにもある。そうした意味において、アスカは男が見せた瞳以上の興味をリンの笑顔に感じ、にやりとしてしまうのだった。

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