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フジの許可を?

「ふふん」  リンを眺めて笑いはしたが、嫉妬に対する好奇心から来る純粋な笑いであって、そこには微塵の嘲りも存在しない。恋敵をいきなり襲うといった暴挙に出たリンと、当の本人に直接ぶつけて憂さを晴らそうとしたアスカ、そうした行動の違いを笑ったに過ぎないのだ。だからこそ、今のこの時のリンの笑顔がアスカの意識を刺激する。そして前は気にもしなかったことに気持ちを向かわせた。  リンは量産品そのものの暗灰色のスーツを着ていたが、長身ですらりとした体形と爽やかな笑顔との相乗効果で、落ち着いた色合いを演出し、特注品ばりの装いへと作り替えていた。それをフジに着せたのならどうなるのか、鼠色の地味で冴えないスーツに様変わりするのが嫌でもわかる。 「あれって」  まさかと思いつつも、アスカは確信を持って呟いた。 「揃いだな」  ペアルックスーツとは〝しもべ〟にも負けない執着心だ。当然のことに、フジの許可を得ているとも思えないでいた。

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