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全くの無関係?

「クソがっ」  アスカは喉の奥で心持ち笑うように呟いた。人狼の恋愛は一度に一人、その意味では一途であり、リンが嫉妬に狂って変身したのも頷ける。それ程に憎き恋敵を目にしたのだから、笑顔の裏の思いが穏やかである訳がない。そこに男が―――ヴァンパイアまでがいると知っては、怒声を上げたいところのはずだ。しかし、青年の存在が枷となって、人狼のリンは微笑み続けるより他ないことになる。 「同情するぜ」  そう続けはしたが、アスカには自業自得にも思えていた。嫌悪の瞳で青年を見遣る男、その瞳に上機嫌といった様子の青年、歪でしかないこの状況に、微笑みを携えて入り込んだのはリンの方だ。けりを付けるべきもリンとなるが、お陰で青年が『人間外種対策警備』の客人であるのを明らかにしてくれたことにはなる。そしてロングドレスにマントを羽織ってフードで顔を隠すアスカを、青年が気に掛けたので始まる騒ぎに、全くの無関係というのも理解した。

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