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相当叱られた?

 ヴァンパイアの男に行く手を阻まれた人間のアスカ、そのアスカに義侠心を発揮した人間の青年、その青年を嫌悪するヴァンパイアの男、その様子を気にして外に出て来た人狼のリン、そのリンの恋敵が人間のアスカとは、まさに今、アルファが語ったように種族の壁はないに等しい状況にある。時代の変化はモンスターと人間を共存させはしたが、人間に合わせたことで、時にモンスターだけが胸糞悪さを強いられもした。それもヌシには喜びとなるのだろうが、殆どは能力的に強者というのに、法に縛られ、好きに出来ない。怒気を含んだ力業で猛々しく語り合うのは、モンスターにはまず許されない時代ではあった。 「ったくよ」  我慢を知らないリンまでがプロに徹して微笑んでいるのだ。瞳の色はまだまだでも、アスカとの一件をアルファに相当叱られたと見ていい気がした。それでも同じ人間という立場からすると、青年に対する態度との余りの違いに、剝れたくはなっていた。

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