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男も青年も?
リンにすれば、アスカと青年は別物となるのかもしれない。モンスター居住区に暮らす能力者と人間種社会に暮らす能力者だ。同じ人間の『霊媒』であっても、同じとはならない。リンが唸り声と共に変身し、問答無用で鉤爪を振り下ろして来たことも、同族意識がさせたと解釈出来なくないのだ。人間には不干渉の精霊が瞬時に時間と空間を歪めて、病院送りも必至の一撃をひょいとかわせるようにしてくれたのを見てもわかる。リンの上品ぶった爽やかな微笑みもまたしかりで、そこが逆にアスカには憎らしくてならなかった。
「っても……」
ふとアスカは男を思った。青年に嫌悪の目を向けるのは、法の縛りから来る人間上位の慣行に逆行する。取り成そうとはしたが、リンの登場でその気も失せた。とするのなら、アスカが今するべきことは、先に決めた予定だけとなる。男も青年も、アルバイト風山男とのルンルンな日々を目論むアスカには、邪魔で無用な存在でしかないのだ。
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