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なんでここに?

「うぐぐっ」  悔しげに唸ってみても始まらない。アスカの完全なる無事の確保は不首尾に終わった。離れがたくあっても、男の胴に絡ませる足を解き、首に掛ける腕も外して、雲の上に降り立つしかないのだ。アスカはええいままよとそうしたが、同時に股を広げてしゃがみ込んだことで尻に何かが当たり、その痛みに思わず顔を顰めていた。それが籐編みの手さげかごというのは、確かめるまでもないことだった。 「……っ、クソっ」  苛立たしげに引き寄せたのが悪かったのか、ロングドレスの裂け目がさらに進んで、太腿から股の付け根近くまで露わにされて行く。それでもしゃがみ込んだ時に、マントがふわりと広がり、うまく隠してくれていた。お陰でアスカも硬派の威厳が保てるというものではあった。 「で……さ」  わざとらしく正面を向き、自分の尻圧で僅かにひしゃげた手さげかごにはむすっとしつつも、低く抑えた口調で男に問い掛けた。 「俺、なんでここにいんのよ?」

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