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答えは驚き?
「だが……」
ところがそう悠々と返したあと、男は口調に浮かべた苦笑を消して、無表情に見合った抑制の利いた声音に戻していた。青年について語るのが、それ程にも心を乱されるということなのだろう。そういった激しさがヴァンパイアへの変異を可能にしたのだから、わからなくもない。青年の祖先がどこぞの金持ちに競り負けたのちも諦めず、領地奪還を悲願とし、未だ躍起になっていると平坦に話して行こうが、苛立ちは隠せていないのだ。唐突に黙り込んだのを見ても、内心で怒髪を逆立てているのは間違いなかった。
「てか……」
それがアスカには誤魔化されたように映ってしまう。青年の祖先が末席の縁者としても、男の子孫であることに変わりない。かつて治めた領地に執着して何が悪い。
「あんたにゃクソかもしんねぇが」
アスカは素直な調子で、逆に男を問い詰めてみることにした。
「子孫なんだし、悲願くれぇさせてやれよ」
それに対する男の答えは驚きだった。
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