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責務からしている?

 全面解放というと、アスカには変態屋敷で見掛けた怖いもの知らずな男二人のことが思い出されてならない。彼らは見目麗しい男を理想とし、不老不死を夢見てヴァンパイアに変異したがっていたが、モンスター居住区に囲い込まれるような田舎暮らしを望んではいなかった。地位や財産に相応する華やかな都会暮らしを続けるつもりでいた。良くも悪くも一途な情念を持たないままに、中途半端にかかわって、まったき闇に落とされる結末しかないというのに、彼らは時間さえ金で買えると本気で信じていた。解放にはそうした選民意識の強い人間達の不遜な思いも潜んでいる。 「欲は願いじゃねぇってか」  アスカは苦笑気味に呟き、青年の先祖が胸にいだいた悲願も同じと気付く。全面解放の目玉となる観光事業は管理する不動産会社に莫大な利益をもたらすが、それも子孫と称する青年の身内には欲としか映らない。男が領主としての責務からしていることだとは考えもしないのだ。

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