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一緒に腹を立てよう?
「っうか……」
アスカの感性からすると、青年の身内である子孫のことも男程には腹が立たない。青年の先祖も見方を変えれば、侘しい山村への国替えを切っ掛けに凋衰させた一族に代わって、家門を存続させた功労者となる。男の子孫と名乗り、かつての領地に執着してみせようが、傍系とも言えないような末席の縁者と非難するのは偏屈過ぎる。ましてやモンスター居住区と呼ばれる地域に対して、領地領民への責任を求めるのはふざけた話にしか聞こえない。青年の先祖が胸にいだいた悲願がただの欲としても、時間さえ金で買えると信じる人間達同様に、男にとっては些細なことに違いないのだ。それで男もこう言ってのけたのだろう。
〝私であれば、即座に改易させようものを〟
天下人となった隣国の領主が恩情を見せずに、あの場で取り潰してくれていたのならと、愚痴っていたという訳だ。これでは面倒事の嫌いなアスカでも、男と一緒に腹を立てようと思えるはずがない。
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