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位置がとんでも?
「ふふん」
欲の皮を突っ張らせて一人で喜ぶアスカの顔は、へらへらとしてどことなく意地悪い。この身に女を重ねた男への腹いせでもあったからだが、だからといって本質を探る気持ちまでなくしてはいない。戦乱の世の過去からモンスター居住区完全解放という今現在の問題へと達した話は、男と青年を密接に繋いだ。なくせる訳がない。
それでアスカが真っ先に思ったのは、モンスターカフェに見るような中心街の整備だった。完全解放を見据えての整備なのは明らかで、遅延すればしただけ、不動産会社の損失も膨れ上がる。青年の身内である子孫もそこを狙った。解放賛成を装いながら裏で反対派に与し、代表である男と交渉しようというのだ。
「だろ?」
「無知たる故の……」
アスカの呟きの何を気にしたのかはわからない。男は漫然とした哀れみに依然として嘲りを浮かべてこう言った。
「愚行」
それもそのはずだ。続けて口にした金鉱脈の位置がとんでもない場所だった。
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