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兄……上様?
「……だな」
新しい時代を作り上げるには巨額な資金を必要とする。それを男が闇から借りた黄金で賄ってやったという訳だ。夢を託すといった優しくも甘い考えからではないのだろう。モンスター達の安寧な暮らしを保証させる為にしたことに違いない。影の資金提供者として近付くことは、ヴァンパイアの能力をもってすれば容易に出来る。相当な重量となるはずの黄金の運び出しにも、苦労をしない。それが伝説となったくらいに、天下人の居城には黄金が確かに存在し、万が一に備えて温存されてもいたということだ。
「っうか……」
天下人には影の資金提供者が誰であるのかがわかっていたような気もして来る。ひょっとすると兄と慕った男への謝意が伝説となったのかもしれない。そうアスカが思えた時、驚愕に震える声音が耳に響いた。
〝兄……上様?〟
壮年期らしい重みのある声音は精霊のお節介だ。となると続きも聞くしかないことになる。
〝なん……たること……か〟
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