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別れの挨拶にも?
天下人が驚くのも無理はない。死んだはずの義兄が類い稀なる美貌の化け物となって、暗夜に紛れて密やかに、不意に寝所に現れたのだ。しかも相当量の黄金を携えての訪問となれば、受け入れるのには時間が掛かる。しかし、さすが天下を制した武将というだけあって、すぐにも立ち直っていた。矢継ぎ早に質問し、男の身に何があったのかを知ろうとした。
〝されば、姉上様も?〟
事の成り行きを理解するうち、アスカの胸の奥深くに宿る女もまた、男と同じに生きていると期待したのだろう。家臣の手に掛かったと聞かされるや否や、狡猾じみた口調でこう返していた。
〝極悪非道、のちの世にも告げましょうぞ〟
その為に、天下人の世の文書において、罵詈雑言の嵐を浴びせておくというのだ。それには男も笑うしかなかったようで、渋さの中にも甘さを思わせるあの声音を低く柔らかに響かせ、やめるよう促した。そしてその笑いを天下人との別れの挨拶にもしていたのだった。
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