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時節到来との?

「へぇ」  つまりそういうことなのだと、アスカには思えた。男とアルファは二人だけの世界で熱く拳で語り合えるような間柄でもある。女を挟んでといった軟弱さへの恥じらいくらいはあるかもしれない。しかし、単純で実直なその熱い語り合いを朴訥と映しはしても、嫌悪とはならないはずだ。嫌悪は男が青年へと向けたもので、前世が関与してのことも明白だった。つまり中心に据える者を女に替えたのなら、全てがしっくりするということなのだ。  青年の先祖は男が何者かを知らずにいたが、青年については霊媒と見抜いたアスカにはそうならないのがわかっている。その能力がモンスターに用をなさないとしても、ヴァンパイアコスの少女の件がある。憑依した五人を思えば理解もしよう。 「てか……」  少女の父親はモンスター居住区完全解放反対派の支援者だ。青年が『人間外種対策警備』に現れたのも、時節到来との意気込みからだろう。アスカにはそう思えてならなかった。

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