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用なし上等?

「……ってもな」  アスカに霊媒らしさがないとしても、妙な疑いを持たれずに済んでいるのは、元が人間であったヴァンパイアや人狼といった変異種族の暗躍があってのことだ。元来、精霊の声が聞ける能力は、元が人間のモンスター達を討伐する為に必要とされていた。その珍稀な能力をもってすれば、絶対的な強者となり得る変異種族を怯えさせ、人間を優位に立たせてやれるのだ。だからこそ、人間との共存の時代には無能にしなくてはならなくなった。結果、アスカは占いしか出来ない落ちこぼれの用なしと馬鹿にされることにはなったが、人間相手に商売をしているせいか、能力者としては疑問をいだかれずに済んでいる。  そうされたことに諸手を挙げての感謝はないが、怒り狂う程の憎しみもない。それでも人間とモンスターとの共存が機能している証拠であり、そうした平穏な暮らしを望んでモンスター居住区に移住したのだから、用なし上等といった思いくらいはあった。

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