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振り切るのは?

「やっぱ、アレだ」  そう呟くアスカの頭に浮かぶのは、モンスターカフェで腹を満たしていた時に突如現れた男のことだ。嫌みったらしく投げ付けてやった〝ケツ推し〟が、ここでもそっくり当てはまる。そうなるとアスカにはこう続けることしか出来ないでいた。 「ふざけやがって」  見目麗しい男は精霊達には歓喜であり、それでいて男を慌てふためかせるのを喜びにもする。なのでチクられる危険はないと思っていた。その思いに迷いはないが、のべつ幕なしに喋る精霊達が意図せず漏らすことは十分に考えられる。事実、アルファに女の伝言を聞かせたあと、籐編みの手さげかごを返しがてらアルバイト風山男を誘うつもりでいたアスカを、男は壁となって阻んだ。 「でなきゃ……」  洒落たスリーピーススーツで身を飾る壁に鼻先をぶつけたりはしない。つまり先を見越して出掛けて来ようが、精霊達に愛される怪力自慢のヴァンパイアを振り切るのは、アスカにはまず無理となる。

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