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男が立って?

 ナギラは話を続けていた。男が会議の時間を遅くするようフジに指示したこと、どこへ行くとも告げずに瞬間移動で姿をくらましたこと、その突飛な行動に不慣れな為にアスカの不意な出現にも驚きを隠せずにいたこと、そういった話をつらつら継いでいた。 「普段、ご領主様は全てにおかれまして、慎重に且つ冷静に対処なされますのに、なんともはやおかしなことになっておりますよ」  しみじみとして、それでいてどこか弾むような声音から、ナギラもはたきを掛けながら精霊達の馬鹿騒ぎを楽しんでいたのが窺える。続き部屋のドアが閉まる音に交じって響いたフジの叫声にしても、相手が男というだけで、理由は同じと言いたいようだ。  精霊達の真に迫った実況は聞きごたえがある。映像がなくても十分に楽しめたに違いない。まさに覗き見していたようなもので、その噂の人物が不意に現れたとすれば叫声も上がる。騒いだ次の瞬間に男が立っていたのだ。焦らないはずがない。

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