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してやりたい?
「っても……」
アスカは思っていた。ナギラの話を善意に解釈するのなら、男の瞬間移動も会議の時間が差し迫ってのことだと言えなくはない。早々にリモート会議を始めていたのだから、そこそこには合っている気がする。要するに精霊達と一緒になって騒いでいたフジに奇襲を掛けたということだ。ムチ姫のしもべになるような変態気質と、男を父親と慕う思いとで、フジには感涙体験だっただろう。それも男はわかった上でしている節がある。何の説明もなしにアスカを運んで来たのも、フジを針の筵に座らせようという算段からだ。アスカならこっぴどく叱ってやるが、それが男の流儀でないのは理解することではある。
「クソがっ」
アスカは続けて思っていた。さらには出禁を看板にして掲げもしてやる。精霊達にもしてやりたいところだが、彼らには物心付いた頃から助けられているのだ。家業の占いも彼らの噂で成り立っている。怒鳴り付けるだけで留飲を下げるしかない。
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