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見過ごして?

「うぐっ」  初っ端に感じた女扱いは正しかった。そこに思いが及んだ時、無理にも見せたアスカの笑顔が引きつりまくる。反対に、涙が揺らめくもふもふ顔は笑いに弾けている。その怯えに擬態したかのようなナギラの興奮がアスカに恐怖の記憶を―――ムチ姫のしもべ達からの逃亡の記憶を思い起こさせた。  ナギラがしもべでないのはわかっている。しもべの興奮にはアスカの罵倒が付きものだ。しかも寡黙に迫り来て、蹴り飛ばされるまで待ての姿勢を執拗に維持しようとする。そういった陰湿で奇怪なしもべと違って、笑いに弾けるナギラの興奮は明朗で単純と言えていた。無言の圧力も見せていない。それでもそこに同じ匂いを感じてしまうアスカではあった。 「ぐぐっ」  後ろに下がるにも壁しかない状況がアスカにそう思わせたのかもしれない。しかし、しもべ相手のように逃げて終わりに出来ないでもいた。ナギラはアスカを御台と呼んだ。見過ごしてはならないことだった。

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